2012年TVアニメOP10選「あの夏で待ってる」OP

あの夏で待ってるSign
絵コンテ・演出:長井龍雪 作画監督:田中将賀
作詞:KOTOKO 作曲:折戸伸治 編曲:高瀬一矢 歌:Ray

以前から、長井龍雪さんのOP/EDについて書きたいなと思っていたわけですが、背中を押されたこともあり今回書くことになりました。かなりの長文で駄文ですが根気強く読んでいただけたらと思います。基本的にイントロから順番に説明していくので、映像と合わせて読んでいただけるとより楽しめると思います。では、始まりますw

 まず、イントロ。このアニメのヒロインであり、劇中で撮っていた映画のヒロインでもある貴月イチカを縦に連続するフィルムに収めることで、このOPが映画としての役割も果たすということを示している。また、タイトル「あの夏で待ってる」と合わさることでOPとアニメ本編と映画の連動を暗示している。
 次にAメロ。30秒ほどあるのだがたったの7カットしか使っていない。しかもほとんど作画で動かしていないのだ。PANと色を使った映像処理だけでもたせているあたり、いかにも長井さんらしい。PANの方向にも意味があるのだが、それについて詳しく言及されている方がいるのでその方の記事を読んでいただきたい。『あの夏で待ってる』OP映像から見えてきたこと―他の長井監督作品と比較して - 新・怖いくらいに青い空
 Bメロに入った瞬間、あえてしていた青色系の映像処理を外し通常の色合いに戻る。それと同時に他のキャラが登場する。一気にそれが行われているため映像的インパクトが非常に強く鳥肌モノだ。
 本編でのアイキャッチや大胆なブラックアウト・ホワイトアウト、『ガンダムO0』ED1や『とらドラ!』OP1・ED1、『あの花』OP・ED、『ココロコネクト』ED1のようにキャラを一気に登場させたり消したりなど他の長井さんの映像にも通じるところである。またAメロまではキャラクター1人1人を描いていたのに対し、Bメロでは一転全員を登場させて実際に距離感を見せることでわかりやすくキャラの関係を描いている。
 またそのキャラの配置も絶妙である。ロングでバランスよく映っていてキャラの距離感を表現しつつアップにしてもそれぞれがらしい場所にいるのである。さらに同じシーンでは光と影のバランスもいい。これらの条件を同時に満たしたレイアウトで描けているのは演出段階での微調整の賜物であろう。
 Bメロに入る直前では主人公・霧島海人が8ミリカメラを構えあの夏が始まる高揚感に満たされる。
 サビからの8ミリカメラでの撮影部分では本編5話で始まったあの夏の青春を美しく切り取っている。キャラクターの本質を理解しているので実に生き生きとした動き・配置となっている。長井監督で8ミリカメラといえば『とある科学の超電磁砲』のOVAでも使った手法だ。しかしあのレールガンOVAのOPでは4人で撮影し合っているのにもかかわらず全員が映り込むという矛盾が生じてしまっていた。それをこの『あの夏で待ってる』OPでは8ミリカメラでの撮影部分をサビの一部に限定することで見事に解決してみせた。 
 そして8ミリでの撮影が終わり海人とイチカがイチャイチャ、後ろで見ている構図。これも上手いレイアウトなのだが、谷川柑菜派にはBメロでの扱いも含め厳しい映像で
ありふざけるなと思うであろう。その救済策として次のカットで柑菜と海人を中心に置き、向き合って話させている。長井監督の柑菜への愛が見受けられる。しかしそれは右にいる約束された本妻がいるからこそ成り立つ配置であり、イチカは余裕なのだ。視聴者に期待を持たせつつ本筋は外さないという絶妙な配置だ。
 ラストカットでは8ミリカメラと眼鏡となっている。海人とイチカを表している。ラストカットにモノを置く演出を長井さんは『アイドルマスターXENOGLOSSIA』OP2、『とらドラ!』ED1・2、『レールガン』ED1、『あの花』EDなど多用している。
 ラストカットに人ではなくモノを置く理由。モノに意味を持たせて考えさせる演出がしたいとご本人が語っていた記憶があるが、それはラストカットに限る話ではなかったため、それは最大の理由ではないだろう。
 では、何が理由なのか。私が考えるに人で終えるのが難しいからだろう。
 というのも、OP/EDのラストカットでは終わるための画にしなければならない。終わるためには映像を止めるか、動きを小さくしなければならない。人を使ってその状態にするのは非常に難しい。人が動かないというのは不自然で不恰好だからだ。ラストカットに写真がよく使われるのには、その違和感を弱める意図もあるのではないかと考える。(もちろん単純に写真で終えるという余韻の意味も考えられる。)そのように人をラストカットに使うことには工夫が必要で、ワンパターン化しやすく、綺麗に見えないことが多い。
 それを簡単に解決するのがモノで終える方法である。モノは動かないのが普通であるため、止める画にすることに違和感がないのだ。モノで終える方法には、タイトルを映したり風景を写したりするものあるが、そのうち私が最も好きなのが人のモノでの置き換えだ。モノに意味をもたせることで表現の幅を広げるとともに視聴者に考えさせ、楽しませる効果があるという一石何鳥にもなる演出になるのだ。このOPのラストカットでは最後は海人とイチカの物語であるのだということを改めて示し、監督として方向性を表明したのである。
 他にも『おねがい☆ティーチャー』OPとの親和性や、カットの切り替え、タイミングの上手さなど多く書きたいことはあるが、また別の機会に?

という感じでいかがでしょうか?2000字超えましたw2000字超えるくらい書いてみたいなとは思っていたのですが、本当に超えるとは驚きです。本当に長井龍雪が好きなんだな自分、と改めて実感しました。また、書いている間に新たな発見もあって、書くことに意味があったと思います。それでも、せっかく発表したのだから読んでいただけたら嬉しいという気持ちもあります。最後まで付き合っていただいた方、本当にありがとうございます。10選の残りはまた後日書きたいと思います。ではノシ

P.S.あの夏で待ってるOPについてUst放送しました。どらトラのひとりよがりラジオそちらもぜひ合わせてご覧ください。